研究概要 |
【目的】唾液中Epstein-Barr Virus (EBV) -DNAが運動に伴う防衛体力・コンディションを示す指標となりうるかを明らかにするために,高強度運動時における唾液中からのEBV-DNAの検出方法について検討し,検量線を用いてその発現量を定量化した. 【方法】自転車エルゴメータを用いた一過性の高強度運動の前後に採取した唾液から,ChargeSwitch(Invitrogen社)を用いてDNA抽出を行った.抽出されたDNAを鋳型として,EBV-DNAを特異的に認識するプライマーを用いたPCRにより,EBV-DNAを検出した.既知の濃度であるEBV-DNA挿入ベクターを用い検量線を作成した.検量線を基準とし,唾液より検出したEBV-DNA発現量を定量化した.また,その他の免疫学的指標として広く用いられている唾液中のSIgA分泌速度をELISAを用いて測定した.血清中のEBVに対する抗体検査を実施し,対象者の感染既往の有無を調べた結果,全員が陽性であった. 【結果】唾液中EBV-DNA発現量を,既知の濃度であるEBV-DNA挿入ベクターを用いた検量線を基準とすることにより,定量化することが可能となった.唾液中EBV-DNA発現量は,高強度運動によって変動したSIgA分泌速度は,高強度運動により減少した.EBV-DNA発現量とSIgA分泌速度の変動については,相関は認められなかった. 【結論】EBV-DNA挿入ベクターを基準にした唾液中EBV-DNA発現量の定量化は有効であった.この検出系を用いることにより,唾液中EBV-DNA発現量を評価することが可能となった.唾液中EBV-DNA発現量は,一過性の高強度運動によって変化した.EBV-DNA発現量,およびSIgA分泌速度と上記道感染症の関係性については,長期的なモニタリングを含め,さらなる検討が必要である.
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