研究概要 |
本研究の目的は以下の2つの課題を遂行することであった。 A.遺伝情報などのパラメータが減量の個体差に与える影響力を数値化する。 B.個体差を考慮したオーダーメイド減量プログラムの有効性を検討する。 本研究課題を達成するために,今年度だけで175名に対する減量介入を実施した。この3年間で構築したデータベースは,男性123名,女性467名,合計590名に達した。このうち350名については,140個の遺伝子に含まれる742個の一塩基遺伝子多型(SNP)の解析が終了している。さらに,性別,年齢,閉経の前後,形態,体組成,体脂肪分布,体力レベル等の減量前後の測定結果がデータベースに組み込まれている。 このデータベースを用いて解析を進めた結果,以下のような新たな知見が得られた。 1.体重減少によりメタボリックシンドローム構成因子は確実に改善する。体重の減少方法は,食事療法+運動療法,食事療法,運動療法の順に効果が大きい。減量目標の目安は初期体重の5%程度と言われているが,10%以上の体重減少で効果が拡大する。 2.決定木分析(データを様々な条件を基準に木の枝葉のように分類していく分析手法)を用いることにより,メタボリックシンドローム構成因子改善のための体重減少率は8.4%以上であることを明らかにした。 3.体重減少率の個体差を減量前の各指標(性,年齢,閉経の前か後か,形態,体組成,体脂肪分布,体力レベル)の個体差から予測することは困難である,との結論を導いた。 4.肥満関連遺伝子のSNP情報によって,体重減少率の個体差を予測することは可能である,と考えられた。その具体的なSNPの特定については,今後のさらなる研究成果が待たれるところである。 5.食事群と食事+運動群の体重減少率の差は,SNPの組み合わせによっては,4〜5%に達することが示唆された。
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