障害児に対する社会的な教育の要請は高まっているが、重度・重複化した障害を持つ児童への教育をどうするかは、緊急の課題である。このような児童に対して、多くの感覚に働きかける緩やかな刺激を与え、本人が気持ち良く感じる感覚を楽しむことを通して、気持ちを落ち着けたり、また能動的な活動を引き出そうとするのがスヌーズレンである。この空間について、以下のような研究と調査を行ない、成果を得た。 1.日本スヌーズレン協会を訪問し、日本におけるスヌーズレンの普及実態などについてヒアリングを行ない、全国の状況について把握をした。それによると、日本では、まだ数十のレベルでの施設数しか存在しておらず、また障害者・児施設で取り入れている事例が多い。今後は高齢者を対象として、病院や特養等での展開が予想される。これからの動きとしては、和風のものを重視したズヌーズレン空間づくりがなされていくであろう、ということである。 2.関西と関東の複数の施設を回って現地調査を行なった。設置されている器具の種類、配置の状況、スヌーズレン利用者の反応、現在のスヌーズレン空間の評価などについてである。その結果、(1)器具としては、バブルチューブ、サイドグロー、プロジェクターなどが多く用いられている。(2)スヌーズレンの利用によって、日頃興奮してなかなか落ち着かない児童が徐々に沈静化したり、指導者に共感を求めるようになるなど、プラスの効果があるという意見が、指導者から多く聞かれた。(3)指導者が障害児を見る目を養える効果もある。(4)器具の購入を現在は輸入に頼っていることが多く、スヌーズレンルームを設置する上での困難につながっている。(5)施設全体の空間面積が限られている中でのスヌーズレンづくりは難しく、また、認知度が低いため理解が得にくい状況の中で設けられていることが明らかになった。
|