研究概要 |
米飯の食味と組織特性の関係を明らかにすることを目的として,炊飯条件,特に炊飯時の水量と組織構造および硬度との関係を調査,検討した. 供試材料にはコシヒカリ玄米(2004年新潟産)を用いた.玄米は炊飯直前に無洗米精米機によって白米(無洗米)に搗精した.無洗米150gに蒸留水を加えて室温で30min浸漬させたのちIH炊飯器で炊飯した(炊飯時間42-50min).加水量は150,200および250mlの3段階に設定した.なお測定サンプルには炊飯釜中央付近の米飯を用いた.米飯の短軸方向に80%圧縮し,そのときの硬度[N]を測定した.測定にはクリープメータを用いた.トリガーポイントは0.2Nの抵抗力を感知した位置とした.内部構造観察には簡易切片化法と紫外領域での細胞壁成分の自家蛍光特性を利用した可視化法を適用した.表面構造観察には走査型電子顕微鏡(以下,電顕)を用いた. 研究の結果,加水量が増加すると硬度が低下し,細胞の膨潤,細胞壁の崩壊や,表面付着層が波打つ様子が観察された.加水量が増加すると澱粉の糊化度も増大するため米飯の硬度は低下する.圧縮試験の結果を考慮すると米飯の硬度は糊化度とともに細胞壁強度にも影響を受けることが確認された.また加水量の増加に伴い米飯外縁部の崩壊も確認された.これは細胞レベルの崩壊が米飯レベルの崩壊を引き起こした結果であると推察される.また,内部構造の観察結果を考慮すると加水量250mlの米飯では外縁部が著しく崩壊しているため内部成分の炊飯液への流出が顕著に生じていると推察できる.以上より加水量の違いが米飯粒の構造に変化を及ぼしていることが確認された.また,その結果食味にも影響が生じていると考えられる.これらの結果に加え,粘度,米粒内の成分分布や糊化度と組織変化の関係などについて明らかにすれば,食味と組織特性の関係を解明できるのではないかと考えている.
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