研究概要 |
高齢化の進行が急速である今,加齢に伴う免疫力低下は周知の事実である。本研究では女性に注目し,年齢差による免疫能を捉えることを目的に唾液を採取し,分泌型IgA濃度を測定,生活状況,食生活についてアンケート調査を行い検討した。 若年女性は大学2年女子学生58名,老齢期女性として昨年度は特養等に居住する者(以下在施設者)(平均84歳)30名,本年度は自宅に居住する者(以下在宅者)(平均79歳)14名を対象とした。唾液はキットを用い高齢女性3分間,女子大生3分間採取し,唾液量,IgA濃度,タンパク質量を測定,調査項目は生活状況,食生活等について確認した。在施設者と在宅者の調査結果はχ^2検定、測定値と各回答はt検定を行い検討した。 高齢者の居住形態にかかわらず,唾液量は女子大生が有意に多く(1分間あたり),IgA量,タンパク質量は高齢女性の方が多い結果となり,高齢女性と若年女性の傾向が昨年度と一致した。女子大生では気分の良くない者は唾液量が少なく,気分の良否と唾液分泌との関連が推測された。栄養素量の摂取状況と各測定値には差が認められなかった。高齢女性では,唾液量,IgA量ともに在施設者と在宅者の間に大差はなかったが,在宅者は各値で個人差が大きく,残歯と唾液量の関連性は在施設者では認められたが,在宅者では認められなかった。総義歯率,杖,車いす使用は在施設者の方が高率を示した。睡眠時間は差がなかったが,よく眠ったという自覚は在施設者が有意に高率であった。肥満度による唾液量の相違は個人差が大きく,いずれの年代でも差が認められなかった。 昨年度本年度を通じ,年齢の若い女子大生はIgA濃度の薄い唾液が多く分泌され,高齢女性は唾液のIgA濃度は濃く分泌量が少ないことが示唆された。高齢女性では全体の傾向は捉えたものの,在宅者では個人差が大きく,今後多くの要因を考慮する必要性のあることが判明した。
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