研究概要 |
大陸に近く,大陸起源汚染物質を良く記録していると考えられる東シナ海や日本海側の離島,島根県隠岐男池,長崎県壱岐・対馬・五島列島,沖縄県宮古島,新潟県佐渡の7箇所の池において,長さ約1mの不攪乱堆積物試料を採取した.それぞれの堆積物の層相記載,C-137法とPb-210法を用いた年代測定,球状炭化粒子(SCPs)・球状灰粒子(IASs)分析,多環芳香族炭化水素(PAHs)分析,重金属元素濃度分析,鉛同位体比測定や珪藻分析を行った.研究の結果,隠岐男池および五島汐池堆積物は過去約100年間以上の歴史トレンド解析に適していることが判明した.これらの池堆積物の鉛・亜鉛・銅・水銀などの重金属濃度やSCPs・IASs含有量は,1930年代から現在まで増加した.この歴史的変化傾向,とくに1970年代以降の変化については,日本の都市域の変化傾向とは明瞭に異なり,中国大陸の変化傾向に一致することが明らかになった.さらに,1970年代以降,隠岐および五島に負荷された鉛同位体比は,中国大陸由来の鉛同位体比と類似することを示し,これらの離島には1930年代から日本および中国大陸からの影響,1970年代以降は,主として中国大陸の影響が顕著であることを指摘した.また,PAHs濃度の歴史トレンド解析では,1970年代以降は中国大陸の影響が大きいこと,五島は隠岐よりも中国大陸からの影響を強く受けていることを明らかにした.なお,珪藻群集に関しては,時代的な変遷は明瞭には認められなかった.
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