研究概要 |
従来の増幅しない繰り返し80MHzのフェムト秒Ti:Sapphireレーザーの代わりに,繰り返し可変でピーク強度の高いCavity dump機能を有するTi:Sapphireレーザーを光源として,共焦点顕微過渡吸収システムを構築した。これにより,従来不可能であった,数ns以上の寿命を持つ成分の解析が可能となっただけでなく,これまで高い繰り返しによる熱効果によって起こっていた試料ダメージを防ぐことが出来るようになった。さらに,ピーク強度が従来より数十倍上がったことにより,フォトニック結晶の長さを短くすることが出来た。これによりシステムの時間分解能も従来の0.9psから0.3psと良くなった。また,顕微過渡吸収分光法の空間分解能は約800nmであった。 共焦点顕微過渡吸収分光システムの応用例として,α-ペリレン微結晶の過渡吸収スペクトルを測定し,640nm付近に吸収ピークを持つことを明らかにした。このスペクトルは溶液中の2分子で相互作用したエキシマーの過渡吸収とも異なっており,結晶中で強く相互作用した自己束縛励起子に由来するものである。さらにその生成過程は約2psであった。 さらに,金の微粒子やロッド等のナノ構造体を用いてその2光子発光を測定した。この発光は500-700nmの範囲において、非常にブロードなスペクトルを示した。また、スペクトルの形状は金ナノ構造体の形状にわずかに依存した。さらに,その発光寿命を測定したところ,単一金ナノ微粒子と単一金ナノロッドで異なっており,ナノロッドの寿命(5〜7ps)はナノ微粒子の寿命(〜50ps)よりとても短いことが明らかになった。これは光励起されたプラズモンの緩和機構の違いによるものであると考えられる。金ナノ構造体の過渡吸収ダイナミクスも測定し,数psの緩和過程があることを示した。
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