研究概要 |
ポリ塩化ビニル(PVC)と多孔質アノード酸化アルミナテンプレートから液相鋳型炭素化で得られるカーボンナノファイバーの構造について,詳細な検討を行った。まず,600℃の低温熱処理の段階でファイバー軸方向への炭素の層の積層が確認され,PVCがピッチ状になった段階で生成している多環芳香族化合物がface-onの配向を持ってアルミナと相互作用することがこのような配向の生成原因であることが示唆された。 また,2800℃〜3000℃の熱処理によりカーボンナノファイバーの側面に炭素の層5層程度からなるループの形成が確認され,TEMによる試料の傾斜観察からファイバーの螺旋構造の可能性もあることが示された。 このような熱処理による構造の変化およびファイバー径のリチウムイオン二次電池の負極特性との関連を検討した。1000℃熱処理した試料の可逆容量が大きく,1500および2800℃熱処理した試料の可逆容量は200mAhg^<-1>程度しかなかった。黒鉛化している2800℃熱処理試料の容量が通常の黒鉛材料(理論容量372mAhg^<-1>)よりもかなり小さいのは,ループの生成が関係している可能性が大である。1000℃熱処理試料では,充放電電流密度を増大させても容量の低下は小さく,特にファイバー径が小さいときに容量の低下が小さくなる傾向が見られた。これは,径を小さくすることでインターカレーションしたリチウムイオンの炭素内での拡散距離が短くなることと対応しているものと考えられる。
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