研究概要 |
これまで粒子を含むような複合系の液体において、その媒体が非ニュートン性液体であると粒子が壁面あるいは中心部に偏在することが報告されSigma効果あるいはMigration現象として知られている。しかし、その研究例は非常に少なく十分それらの現象が解明されていない。そこで我々はこれらの現象について、非ニュートン性液体の粘弾性の観点から検討を行った。 まず、Sigma効果の現象を確認するため流動下での粒子の分散状態が直接観察可能な装置を作製した。装置は流体を送る液送ポンプ、ガラスシリンダーチューブ、CCDカメラと画像を取り込むPCからなる。グリセリン・エタノール溶液などを媒体とし、それにPS粒子を分散させた複合液体を用いた。この結果では粒子の明確な偏在は見られなかった。媒体が弱い非ニュートン性を有するPVA水溶液を用いて同様の実験を行ったが同様の傾向を示すことが分かった。 次に、媒体、分散ドメインともに非ニュートン性を有する系について検討を行った。それらの個別のキャラクタリゼーションは粘弾性、GPC-MALSなどで実施した。具体的にはPP, HDPE, LDPE, LLDPE, PSなどを用いて非相溶系ブレンドを作製し研究室既存のキャピラリーレオメータにより細管流動実験を行った。細管流動実験では、温度,せん断速度,細管の長さを変え測定を行った。本研究で用いた様々な非相溶系ポリマー溶融体において、両者の粘度差が大きいときは、低粘度のポリマーが高粘度のポリマーを包み込むように分散する傾向を示し、粘度の高いポリマーが中央へ移動した。しかし、LDPEのように分岐構造を持ったポリマーの場合には、ブレンドしたポリマーよりも粘度が低いにもかかわらず中央へ移動することが分かった。また、せん断速度の増加、細管の長さに伴い内側のLDPEの濃度が増加することも分かった。この知見を利用し、機能性微粒子を高濃度含んだポリマー(非常に粘度が高い)を分岐や架橋されたポリマーやゴムと共に細管から高せん断下で押し出すことで、プラスチック成形品表面の機能性微粒子の局在化への応用が考えられる。
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