研究概要 |
本研究の目標は(1)カーボンナノチューブ(CNT)の電極端子間架橋構造の構築,(2)CNT側面部分への光感応蛋白質であるバクテリオロドプシン分子の配向・固定,(3)光でON/OFFするFET(電解効果トランジスタ)型の超高感度光バイオセンサーの作製・動作検証,であった. しかし残念ながら最大のボトルネックであったCNT-FETの供給が最後まで十分に得られず,率直に言って再現性の確認の取れるような光照射によるFET動作のmodulationは確認できていない.ただし,生体分子計測研究所に移籍した杉山幸宏氏と静岡大学電子科学研究所の藤本教授との共同研究は進んでおり,ほぼ,CNT-FETの自力供給が静岡大学でできるようになってきている.このCNT-FETの作成方法は従来のCCVD法とは異なる被覆固定法を用いており,この点に関しては当初の目標(1)が達成できているし,今後(2),(3)に向かって進める予定である.また,バクテリオロドプシンとCNTの結合・付着条件の検討を行う途中できわめて興味深いことが発見された.電子顕微鏡でCNT上に付着した変性バクテリオロドプシンを観察すると,特徴的な縞模様が見られた.そのフーリエ変換から周期を求めると約0.7nmとなり,βシート構造の周期性と一致した.更にアミロイド構造に対して蛍光を発するFSBを用いて蛍光観察を行ったところ,はっきりした蛍光がCNT上に見られた.これらの知見は主にαヘリックスからなるバクテリオロドプシンが変性してCNTに吸着することによってβ構造に転移したことを示唆しており,想像をふくらませるとBSEの原因となるプリオン繊維の形成とも共通性があるのではないかと思われる.現在そのような可能性も考えて,バクテリオロドプシンとCNTの接着様式について高分解能TEMによる観察を静岡大学電子科学研究所の藤本教授の下で行っている.
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