研究概要 |
前年度は,自転車の実走によって取得されたデータの分析を主に行った.その過程でいくつかの問題に突き当たった.ひとつは,走行パフォーマンスは被験者の体力に依存することである.そのため,複数の被験者によるデータの比較が困難であること.また,一般的な結論を得るには,体力レベルの異なる非常に多くの被験者を必要とすることになってしまうことである.いまひとつは,風の影響である.空気抵抗は,自転車の走行抵抗の中でも大きな部分占め,走行パフォーマンスに大きな影響を与える.走行時の空気抵抗を大きく左右する風速,風向きはデータに少なくない影響を与える.しかしながら,それらの影響をコントロールすることは非常に困難である. これらの困難を乗り越えるため,コンピュータシミュレーションを導入することとした.これは当初研究計画にはなかったことである.初等的な力学と運動生理学の知見を応用して,自転車の定速走行のモデルを構築した.これによって,乗り手の出力レベル→速度,道路環境によって速度が制約→その場合の出力などが,自転車の性能,乗り手の体力を様々に設定することで計算できるようになった.実走データは調査ルートの距離と勾配変化のみを取得し,それをもとにして走行シミュレーションを行った.これによって各ルートの平均時間,平均出力を計算することができる.この2つの指標によって,自転車移動の,移動手段としての側面と健康面への影響(最大出力に対するエネルギー消費量)という異なる軸によって評価する可能性を開くことができた.
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