研究課題
萌芽研究
自己免疫疾患患者の血液細胞あるいは骨髄液細胞で特異的に過剰発現している遺伝子群を、独自に開発した段階的サブトラクション法(多段差引法)を主とし、DNAチップ解析(Agilent, Hu44K)を補完的に用いて、包括的に単離・同定することにより、自己免疫疾患の発症に深く関わっている遺伝子を見出して解析することを目的として研究を進めてきた。最終的な判定は、患者血液から抽出したRNAを混合し、それをcDNA化したサンプルをテンプレートとしたRT-PCR法によって行い、このうち、発現レベルの再現性チェックに合格したものだけを採用した。対象とした自己免疫疾患は慢性関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、高安動脈炎(TA)、ウエゲナー肉芽腫症(WG)、抗リン脂質抗体症候群(APS)、アレルギー性肉芽腫血管炎(AGA)、悪性関節リウマチ(MRA)、側頭動脈炎(GCA)、バージャー病(BD)、結節性多発動脈炎(PN)である。単離した遺伝子については転写レベルを個々の患者で調べることによって病態との関連付けを行った。そのうちアンフィレギュリン遺伝子はSLE, ITP, RAという3つの自己免疫疾患において多くの患者で数十倍の過剰発現が認められた。RAの骨髄液細胞では各患者においてさらに数倍以上の過剰発現が見出された。そこでRAをモデルとして分子細胞生物学的な手法を用いて詳細に解析したところ、アンフィレギュリンがRA患者の滑膜細胞においてEGF受容体シグナル伝達経路の活性化を誘導することで、滑膜細胞の増殖の亢進を誘起していることを見出した。
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