研究概要 |
申請者らは微生物由来ジグリコシダーゼと植物由来ジグリコシダーゼの基質認識の違いを明らかにするため,6-位に種々の修飾基を導入したp-ニトロフェニルグルコシド(6-modified pNPGlc)を合成し,これらに対する活性をそれぞれの酵素に対して測定した.申請二年目において,6-modified pNPGlcの植物由来ジグリコシダーゼに対する結合実験を行った.その結果,用いた3つの植物由来ジグリコシダーゼのうちプリメベロシダーゼおよびフルカチンハイドロラーゼは,6-modified pNPGlcに対して結合能を全く示さなかったのに対して,ビシアニンハイドロラーゼは炭素鎖長が3および4の6-modified pNPGlcに対して結合活性を示した.進行した反応は,活性は低いながらも,与えた基質の水酸基に対する糖転移反応であった.この転移反応系にグルコースを糖受容体として混在させても,転移反応はグルコースに対して進行せず,与えた基質の水酸基に対してのみ生じた.植物由来の3つのジグリコシダーゼのアミノ酸配列を立体構造を考慮して比較すると,活性ポケット入り口に位置するTrpが6-modified pNPGlcに対して結合・糖転移能を示したビシアニンハイドロラーゼのみに存在することが分かった.その他2つのこの位置はAlaであった.このことからこのTrpが芳香環π-π相互作用により基質認識,とくにアグリコンの芳香環認識だけでなく,糖転移反応における糖受容体の認識に関わっていることが示唆された.さらに用いた基質の水中での立体構造を1D-1H,2D-NMR,およびNOE, NOESYを用いて解析を行っている.
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