研究概要 |
本年度の研究の一つ目の柱として,合併タイプ別の実態把握を引き続き行った。中心都市とその周辺地域の合併というタイプ(鳥取市など),生活圏と行政の関連が深い地域が異なるタイプ(兵庫県三田市・三木市と吉川町など),都市圏(生活圏)域全体ではなく,その一部の地域における合併タイプ(愛知県豊根村・富山村)などについて検討を進めた。さらに今年度はこれらの合併圏域と,公共サービスの供給圏域との関係を検討する目的で,公共施設データの整備を行った。具体的には空間的限界をもってサービスが供給される義務教育サービスについて戦後の時系列データを全国規模でデジタル化し,市町村合併との関係の分析をすすめた。研究の二つ目の柱として,市町村合併と都市圏構造の関係の史的変遷をGIS(地理情報システム)によって分析するために,鳥取県東部地域の明治期以降の旧版地形図から都市と農山村の中心施設とハード面でのネットワーク(道路網や鉄道など)に関するデジタルデータの作成を行った。道路ネットワークや諸側面における中心-周辺関係の実態分析から,都市圏における中心地機能と合併圏の関係について事例検討を展開した。またこれらの研究とも関係して,都市圏周辺地域(農山村)におけるハード面のネットワーク整備がいかに行われてきたかも含めて,その政策的側面について以前より研究を進めてきたが,本年度はその研究成果を最終的にとりまとめ,図書の一部として発表した(筒井一伸「国土空間の生産と日本型政治システム」,所収:水内俊雄編『空間の政治地理』(朝倉書店))。
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