研究課題/領域番号 |
16653052
|
研究種目 |
萌芽研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
社会心理学
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
森 久美子 関西学院大学, 社会学部, 助教授 (00290156)
|
研究期間 (年度) |
2004 – 2006
|
研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
|
配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2006年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2005年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2004年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
|
キーワード | 社会系心理学 / 実験系心理学 / 広汎性発達障害 / ゲーム / 心の理論 / 社会的交換 / 協力 / 高機能広汎性発達障害 / 分配行動 / 互恵性 / 平等規範 / 互恵性規範 / 平等性規範 |
研究概要 |
最後通牒ゲーム、独裁者ゲーム、信頼ゲームにおける分配・返報行動の発達的変化を、高機能広汎性発達障害(HFPDD)児と定型発達児とで比較検討した。特に今年度はHFPDD児のデータを追加収集し、定型発達児との量的比較分析を行うことを目的とした。すべての課題で共通する傾向として、定型発達児でもHFPDDでも発達に伴って利己的傾向は減少していた。しかし、利己的行動に代わって主となる行動傾向には両群で二つの相違がみられた。 第一は分配行動の発達に関する点である。定型発達児では、分配に相手の承諾が必要なときには平等に分配するが、不要な場合は利己的に分配する、という戦略的な平等分配を経て、承諾の必要性に関わらず平等に分配する価値・道徳的な平等分配へと移行する傾向があった。これに対してHFPDD児では戦略的平等分配を経ずに価値・道徳的平等分配が出現していた。 第二は返報行動に関する点である。定型発達児では、まったく返報を行わない利己的行動が加齢とともに減少すると、代わりに自分の利益を損なわない範囲で相手にも返報する互恵的行動が増えていた。これに対し、HFPDDでは利己的行動が減少すると、これに代わって自分の利益を大幅に犠牲にしてまで返報するという過剰に返報的な行動が増えていた。 その他の分析も含め、HFPDDにおいては複数の相互に葛藤する社会規範を柔軟に使い分けることが困難であることが示された。従来の社会的スキルトレーニングにおいては、向社会的行動の獲得に重点が置かれてきたが、本研究の結果は、向社会性と自己利益という異なる目標を実現するためのスキルトレーニングに目を向けていく必要性を示している。今後の課題としては、追跡調査のサンプル数を増やし、上記の発達過程を縦断的、個別的に検討することが挙げられる。
|