研究概要 |
研究計画の最終年度となる平成18年度は、論文「『もじゃもじゃペーター群』の教育学的分析(前半)-絵本に描かれる「悪い子たち」の境界づけをめぐるライナー・リューレの試みとその妥当性について」(『東京学芸大学紀要第一部門 教育科学』第57集、2006年3月、47-62頁)において特定した教育学的に重要な『もじゃもじゃペーター』の類似本の一覧にもとついて、引き続きドイツの類似本収集家たち(とりわけ、代表的な収集家であるライナー・リューレ氏、ヴァルター・ザウアー氏、ディーター・ザロモン氏)と郵便およびメールのやりとりを通じて未収集であった類似本の情報および複写を入手した。考察対象の候補としてリスト・アップした182冊の作品のうち、収集した類似本は、約81パーセントの155冊(約1,250話)である。それらを対象として、各物語の内容を確認した後に、(1)主人公の性別、(2)具体的な特徴および行為(3)忠告の有無(4)忠告の与え手、(5)行為の帰結、(6)懲罰の種類、(7)懲罰の与え手、(8)推奨されるモラル、(9)危険の区別(危険としての子ども/危険としての環境)、について分析を加え、それにもとついて物語の歴史的な変遷について検討を行った。その結果、時代の変遷とともに、戒めの多様化、危険な時間帯および空間の変遷、物語における親の役割の普遍性、偏見への配慮の増大、などの傾向が見られることを確認した。これらの結果を「文明化」理論に依拠しつつ解釈した。本研究の成果については単著の形で公刊する予定であり、現在、その準備を進めている。
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