研究概要 |
平成16年度,平成17年度に続き,投票の理論に関係する代数多様体を研究した. 投票の理論はある種の最適化問題と考えることもできる.代表者は,研究の過程で,投票の理論に現れる多項式と線型計画問題の双対内点法に現れる行列が関係していることを発見した。それらは,複素ベクトル束のエルミート計量の曲率に関係する.当然ながら,線型計画の解法との直接的な繋がりも期待されるが,この方面からの解析は今後の課題である. 上の応用として,アファインスケーリング法と中心パス法(として特徴的なもの)の両者は完全に同一の解法であることがわかった.現在この結果を論文にまとめているところであり,これは本研究の主要な結果となると思われる. さらに,投票の理論における代表的結果であるセンの定理を解析した.賛成,反対に加えて,態度を明確にしない「棄権」を導入し,他人が棄権する限りにおいて個人の自由を認めることを提案した. この棄権の導入により,アロウの定理の前提よりも多少弱い形の前提の元で,社会の決定が一意に決まることを示した.このモデルに存する独裁者が多くの選好に対して棄権を選択すると仮定すると,モデルは現実に即したものになっていると思われる.
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