研究概要 |
当該年度は最終である.幾何学的コボルディズム論の問題である幾何構造を持つ多様体はどのような幾何構造を持つ多様体の境界になるかを調べた.2n+1次元Heisenberg infranil多様体(軌道体)はどのような条件のもとでn次元複素双曲多様体(軌道体)の境界になるか,言い換えるとHeisenberg infranil多様体(軌道体)は複素双曲多様体(軌道体)のカスプとして実現されるかを研究した.3次元多様体に関しては実双曲多様体と関係させて様々な不変量がある.我々はspherical CR構造を持つ3次元多様体に対して2次特性類からくるBurns-Epstein不変量を考え,またHeisenberg infranil多様体は狭義凸領域(有限体積複素双曲空間)の境界として自然に捉えることができるため,内部と境界における新たなextrinsicかつintrinsicな幾何的不変量を探し,内部・境界公式を構成した.応用として複素双曲多様体の唯1個のカスプとして実現できないHeisenberg infranil多様体が存在することを示した.具体的には,平坦リーマン多様体の場合同様,我々はホロノミー群の位数が2以上の3次元ハイゼンバーグ冪零多様体は決して唯ひとつのカスプをもつ有限体積完備非コンパクト複素双曲多様体のカスプ切断にはなりえないという否定的結果を得た.これは"Extrinsic"には擬凸CR多様体上のBurns-Epstein不変量に関係する有界領域の特性数の公式と"Intrinsic"には代数双曲多様体上の交点数による計算から得られる.一方,実現に関してはLongとReidにより任意の平坦多様体は有限体積完備非コンパクト実双曲多様体のあるカスプ切断として実現できることを示しているが,その後McReynoldsによりHeisenberg infranil多様体が有限体積完備非コンパクト複素双曲多様体のカスプ切断として実現できるための必要十分条件を与えた.特に任意の3次元Heisenberg infranil多様体は常に2次元有限体積完備非コンパクト複素双曲多様体のカスプ切断として実現できることがでてくる.我々はこの結果を群拡大から得られるInjective Seifert fibrationの方法から導き出した. E.Falbel氏,B.McReynolds氏,O.Baues氏と共に幾何学的コボルディズム論とそのハイパー幾何不変量を融合させたハイパー双曲コボルディズム理論について専門分野から情報の提供・収集を行った.この研究は古典的代数コボルディズム論として歴史は古いがハイパー双曲コボルディズム論という観点からは極めて研究は浅いことから積極的に国内の大学・研究所の数学者のアピールし,相互に研究連絡していくことになった.
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