研究概要 |
Eulerの五角数定理と,その一般化を,無限サイズの行列に関する跡等式と捉え,二つの行列のトレースの差がアノマリーとして析出する様子を函数解析的枠組み,特に,総和法との関連で見直すというのが,研究の主目的であった.この部分に関して,現在まで判っていることを昨年度の数理解析研究所の研究集会({『組合せ的表現論の世界」2005.11.8-11.11)で講演発表したが(「跡等式としての五角数定理」),その講演に基づいた報告を,数理解析研究所の講究録に発表した. また,深く関連する内容として,非可換変数の多項式の計算に現れる,超幾何型及び二項型多項式に関して考察をした.非可換化に伴って『差分的」世界が出現する理由を明らかにすることができ,この方面の様々な和公式と,その背後にある非可換世界のつながりを明確にすることができた.これは一種の双対性の出現であるが,もともとdual pairに由来する枠組みが次第に全貌を現してきたと思われる.また,佐藤のソリトン理論との関係も明らかな射程に入ってきた.このように萌芽的研究の目的であった,当初の期待を裏切ることなく,研究が進み,さらに多重ガンマなどとのつながりを示唆する現象に出会って,この方向性の正しさを確信することができた.今後は,この成果に基づき,五角数定理とさまざまな和公式を双対性の観点から統一的に捉える方向で研究を進めることが可能になったと思う.
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