研究分担者 |
入野 智久 北海道大学, 地球環境科学研究科, 助手 (70332476)
田崎 和江 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (80211358)
森下 知晃 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (80334746)
池原 実 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 助手 (90335919)
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研究概要 |
本年度は,有孔虫の殻に閉じ込められた有機物の含有量について,現生底生有孔虫,化石底生有孔虫(膠着質,石灰質),現生浮遊性有孔虫について分析を行った結果,約0.1-0.4%の含有量を持っていることが明らかになった.特に,浮遊性有孔虫ではその含有量の個体や種による差は小さいことがわかり,同位体分析のための適切な試料量が容易に推定できるようになった.そこに至るまでの過程で,様々な溶媒を用いたり,ふるいを自作するなどして効率的な準備方法を開発した.これらの作業は金沢大学で行った. これらの手法がほぼ確立したことを受け,実際に北海道大学地球環境科学研究院に設置の微量炭素の同位体比分析が可能な装置を用いて個別の種の浮遊性有孔虫(赤道太平洋の表層堆積物に含まれる現生浮遊性有孔虫)の殻構造内部に含まれる有機物の炭素同位体比を測定した(18年2月,3月).1個体の殻の重量が異なるため,分析に用いた有孔虫の個体数は種によって異なるが,Globorotalia menardiiでは100個体を用いて分析を行い,3回測定を繰り返すことができる程度の二酸化炭素ガスを得ることができた.Globigerinoides sacculiferでは400個体を用いることでほぼ同量のガスを得た.個別に処理したG.menardiiの4試料ではいずれも-24.35±0.3‰の範囲であった。このように開発した処理法は炭素同位体比の再現性が高いことが示すことができた.G.sacculiferでは1試料で-22.9‰,Globorotalia tumidaでは2試料から-23.72‰および-24.12%を得た.このように,種が異なっても同位体比値が大きく異なることがない. 本研究の結果,有孔虫の殻体構造内に閉じ込められた有機炭素の同位体比分析の手法が確立した.今後,確立した手法を用いてデータを増やすことで,表層種と温度躍層種に系統的な差があるのかどうか,などが議論できる.また,実用面に関しては,限定した種を用いて有機炭素同位体比の経時変化を調べ,その炭酸塩炭素の同位体比との差を取り,その差が経時的にどのような変化を示すのか,を調査する次のステップに研究を進める段階に達した。
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