研究概要 |
本研究の目的は、年代の分かっている火山灰、スコリアなど固体噴出物の中から過去の噴火時の火山ガス成分の痕跡を探し、その化学組成や量を推定する方法論を確立することである。平成16年度は、熔結した火山灰やスコリア中の気泡、あるいは火山ガラス中の気泡中の化学種を特定を顕微ラマン分光分析で試みたが、どの試料も最大成分であるはずの二酸化炭素すら検出できなかった。気体包有物の主成分が水蒸気で冷却により殆ど真空状態になっているため、二酸化炭素はあっても気泡内の分圧が著しく低く、通常の顕微ラマン分光分析の検出下限以下であったと思われる。そこで本年は,気体包有物ではなく、スコリア中の斑晶カンラン石中のメルト包有物に溶け込んでいる火山ガス成分を構成するイオウ,塩素,二酸化炭素,水など揮発性物質の分析を試みた。分析手段としては,従来から行われている顕微赤外分光装置とX線マイクロアナライザーによる測定のほか,PIXE分析、ICP質量分析も試みた。微小領域の微量元素の測定手段としてPIXE分析は有望であるが,本研究で測りたい揮発性軽元素については,ビーム径を10μmまで絞ると不安定になり定量でいなくなるなど問題が多く,実用的ではない事が分かった。また今回分析伊豆大島火山のメルト包有物では、イオウ、水や塩素などの揮発性物質が多量に溶け込んでいたマグマの存在が確認できたが,最大成分であるはずの二酸化炭素は検出下限以下で、すでに二酸化炭素が脱ガスした浅いマグマの情報であると思われるので,過去の火山ガス成分を復元するためにはさらなる検討は必要である。
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