研究概要 |
本研究の目的は,四重極の交流電場と直流電場を重畳させた統合場が,時間平均されると,全方向において内向きとなる性質を利用したイオントラップの動作特性をプラズマ科学的につまびらかにし,高性能のトラップへの発展を試みるため,基礎的なデータベースを作るところにあった. 1.第1号機を用いた実験においてはイオン密度は当初予想より遙かに低くて高々10000個/CC程度との評価に至った.そこで電流検出法から,マイクロチャンネルプレート(MCP)による増幅を入れた粒子計数法に切り替えて,検出感度の向上を目指したが,1段増幅では不十分であった.特に必須要素である高周波電場のノイズに混入を凌ぐほどの信号増幅が必要であった。 2.実験の一方で高速計算機GRAPE-6を用いて実験と同じ3次元空間でシミュレーションを行った.その結果、主路線とした四重極高周波による閉じ込め方法は少なくとも数ms以上の時間に渡りイオンを保持できることが期待され,計測技術が向上すれば,目的達成に進展可能であると判断された。 3.このような検証により基本に立ち返って着実な実験を積み重ねることの重要性を確認した.まずイオンの検出を最優先課題と位置づけ,単純な空間構造で剛性の高い2号機を設計し新規に作成した.新装置ではイオン生成と電気的な閉じ込め操作,それにイオン計測をそれぞれ,モジュール化した.イオンはまずBe-Cuターゲットに当てて二次電子に変換のあと2段マイクロチャンネルプレートで増幅後,粒々として計数することにした.しかも検出位置は2箇所に増やしイオンの検出確率を改善した.更に閉じ込め空間には複探針を導入して,イオン生成の確認も行える構造に改善した. この2年間の実験計画も終わりに近づき,当初の予想より遙かに難しい課題であることを体験した.しかし,この活動を通じて協力者である院生の技術も向上したし,実験装置の改善も大幅に進行した.高機能トラップに対するプラズマ科学的検討は,萌芽研究を出発点としてこれから本格化する.
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