研究概要 |
これまで,J.R.Longらの結晶を含め,いくつかの対陰イオンを用いて結晶を作成したが,単結晶構造解析が行えない結晶であったり,構造解析が行えても対陰イオンの数に関してのdisorderがみられたため,これらの四核錯体が単離状態ではすべて二価の単一原子価状態であるということを,構造解析の面からから証明することに至っていなかった。しかし,対陰イオンをパラトルエンスルホン酸イオンにしたところ,良好な単結晶が得られたため,X線構造解析を行った。対陰イオンの数が四核錯体あたり8個存在し,すべてのルテニウムが二価で有ることが確認でき,J.R.Longらの結果が。間違いであることを裏付けた。 昨年度の研究において、四核錯体の電気化学における非可逆性の原因がRu(cyclen)2+骨格にある,すなわち配位子cyclenのイミン化がおこっているためであることが明らかになったことから,大環状配位子を用いずに四核錯体を合成することにした。補助配位子をcyclenから4個のNH3配位子にした錯体について可逆な電気化学的挙動を示すかどうかについて検討するために,cis[Ru(NH3)4(py)]2+を合成し,その電気化学的測定を行った。サイクリックボルタモグラムはきれいな可逆波を示し,この骨格を有する四核錯体がQCAに適していると考えられた。そこで,このcis[Ru(NH3)4]2+骨格を有する四核錯体を合成することを試みたが,前記錯体と同様な合成法を試したにもかかわらず,数種のオリゴマーの混合物と思われるものしか得られず,現在のところ単離には成功していない。
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