研究概要 |
本研究においては,剛直で大きな空間的広がりを常に確保できる「フェニレン型」デンドリマー部位を3位に有するピリジン配位子を設計合成した。そして,これらの配位子をパラジウム触媒によるアルコールの空気酸化反応に用い,これらの配位子の中心金属会合抑止効果を検討した。その結果,通常反応に用いられるピリジンや3-フェニルピリジンを用いた場合は直ちにパラジウム黒が析出し触媒の失活が起こるのに対し,3位に空間的な広がりの大きい置換基を有する配位子を用いた場合はパラジウム中心の会合を抑制し,極めて高い触媒活性を継続的に得ることができるという極めて興味ある事実を発見した。その際,これらの置換基を2位に有するものは全く触媒活性を示さなかったことから,遠距離立体効果の重要性が明らかであることを示した。触媒に用いたパラジウム錯体の単結晶を得,X線結晶構造解析によりその分子構造を決定した。その結果,パラジウム触媒中心の周辺は比較的空いており,触媒反応が進行するための空間が十分にあるのに対して,デンドリマー部位が触媒中心から大きく外部に向かって広がり,パラジウム金属間の会合を効果的に抑制していることが明らかになった。第2世代デンドリマーを有する触媒を反応に用いた場合,均一系触媒を用いるアルコールの空気酸化としては,最高の触媒回転数1480を達成した。
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