研究概要 |
1本鎖だけで人工DNAを設計し,その中心に金属原子を電荷の帯びたイオンの状態で,好みの長さに並べたひも状分子を合成することは,極小の分子磁石や分子ワイヤーなどナノテクノロジーへの応用が期待できるため,重要な課題である。本課題を実現する具体的方法として,中心部に金属を配置し,その周りに電気を通さない平面型有機分子・フタロシアニンで包み,電線を輪切りにしたと同じような化合物の合成を計画した。各分子はデオキシリボースをバックボーンにリン酸にて連結した,高分子構造を作りやすいものを設計した。合成は以下のように検討した。3,5-di-tert-Butyldimethylsiloxy-5-iodo-uridinを原料にTrimethylsilylacetyleneとSonogashiraカップリング反応条件下,攪拌することで結合させ,3,5-di-tert-Butyldimethyl-siloxy-5-(2-(trimethylsilyl)ethynyl)uridineを得た。次いでこの化合物からTrimethylsilyl基のみを除去し,3,5-di-tert-Butyldimethylsiloxy-5-ethynyluridineを全収率76%で得た。これに対して,23-Iodo-1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18-dodecakis(2,2,2-trifluoroethoxy)phthalocyaninate zinc(II)を再びSonogashiraカップリングさせ,72%で23-(3,5-di-tert-Butyldimethylsiloxyuridinyl)-1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18-dodecakis(2,2,2-trifluoroethoxy)phthalocyaninate zinc(II)を得た。最後にウリジン部位の保護基を脱保護し,カラムクロマトグラフィーで精製することにより,47%で目的物の合成を完了した。この化合物はフッ素効果のため,長波長領域における吸光係数が大きく,フタロシアニンの持つ極度の凝集作用が完全に抑えられた。
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