研究概要 |
超臨界水と親和性の高い芳香族環を含む化合物を基本とし,水と相互作用しやすい極性官能基を含む化合物として,ベンジルアルコール,1-フェニルエタノール,ベンズヒドロール,シンナミルアルコール,α-フェニルベンジルアルコール,シンナムアルデヒド,ケイ皮酸等を取り上げ,これら化合物の超臨界水中での反応挙動を系統的に研究した.その結果,超臨界水中での新規反応として,酸化剤のない状態かつ無触媒条件下,超臨界水のみで第二級アルコールが酸化され効率よく相当するケトンと水素ガスとを発生することを見出した.特に,ベンズヒドロールを基質に用いた場合,反応温度460℃,反応時間3時間,水密度0.35g/mLで,酸化性生物であるベンゾフェノンを63%の収率で得ることに成功した.また,トリフェニルメタノールを用い,超臨界水中でのラジカル種の発生を,ESR測定,およびラジカル捕捉剤との反応により明らかにした.さらに,含酸素不飽和化合物が超臨界水中で,水素移動反応(シンナミルアルコール,α-フェニルベンジルアルコール),水酸基移動反応(シンナミルアルコール,α-フェニルベンジルアルコール),不飽和結合移動反応(シンナミルアルコール,α-フェニルベンジルアルコール),炭素-炭素結合開裂反応(シンナムアルデヒド),脱炭酸反応(ケイ皮酸)等を起こすことを明らかにした.これらの有機化学反応の反応メカニズムを計算機化学的に解明した.
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