研究概要 |
糖尿病合併症の発症に関与が示唆されているグルコサミン-6-リン酸合成酵素(L-グルタミン:D-フルクトース-6-リン酸アミドトランスフェラーゼ;GFAT)の活性を阻害する植物成分について,昨年度(平成16年度)の研究結果を基に,加水分解性タンニンおよびカテキン誘導体の化学構造とGFAT活性の阻害効果の因果関係を評価・検討して,以下の結果を得た。 1.ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)から分離・精製した加水分解性タンニン(ゲラニイン)は,昨年度報告した加水分解性タンニン(ペンタガロイルグルコース)と同様に,大腸菌GFAT(原核生物型)の活性にはほとんど影響を与えず,酵母GFAT(真核生物型)を選択的に阻害した。 2.カテキン及びガロイル化カテキン誘導体において,3-O-ガロイル化カテキン誘導体は,GFATに対して加水分解性タンニンと同様の選択的な阻害効果を示したが,3-O-ガロイル基を持たないカテキン類は大腸菌及び酵母GFATの両酵素に対して顕著な阻害効果を示さなかった。 3.ガロイル基関連化合物として,没食子酸メチルを同様に評価したところ,高濃度(4mM)でさえも両GFATの活性に対して顕著な阻害効果を示さなかった。 これらの結果から,真核生物型GFAT(酵母GFAT)に対する顕著な阻害効果には,構造上,グルコースあるいはカテキン骨格に結合したガロイル基の存在が重要であることが明らかとなった。酵母GFATに選択的な阻害効果を示した化合物は,大腸菌のGFAT活性に影響を及ばさないことから,GFATへの非特異的な阻害効果ではなく,活性調節部位に結合することによって酵素活性を阻害している可能性が強く示唆される。真核生物型GFATは一次構造や調節機構において生物種間で類似していることを考慮すると,このような化合物は,哺乳類のGFATに対しても同様な効果を示すものと推定され,糖尿病合併症の予防・改善薬として有用であると考えられる。
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