研究課題
萌芽研究
均一な液晶配向に電圧を印加したときに過渡的に現れる周期的な光学組織形成の高分子の導入効果を検討した。ネマチック液晶に微小量の液晶性モノマーを分散し、液晶配向を維持したまま光重合法により高分子ネットワークを形成した試料に、電圧を印加することにより、周期性の高い特異なストライプパターンが現れ、得られたパターンは電圧除去後も長期間保持された。このパターンは高分子ネットワークが存在しない場合に出現しないことから高分子の存在がパターン形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。パターン形成された試料は入射偏光方向に応じて光回折-光透過の顕著な偏光依存性を示した。パターン内部の液晶構造を光回折実験や偏光顕微鏡観察により解析した結果、液晶の配向が基板面に対し同一角度でプラス方向とマイナス方向に傾いた2種のドメインが交互に配列していることが明らかとなった。また、電圧の印加によって発現するパターン形成の時間変化を観察したところ、電圧の強度と電圧の増加速度に応じて形成するパターン組織に差異が見られた。その形成挙動には高分子溶液の相分離挙動とのアナロジーがみられた。本研究で得られた電圧印加後に無印加状態でメモリーされた液晶周期構造は、高分子を導入したことで初めて得られた構造であり、この構造体は、偏光されていない光を偏光方向に応じて二方向に分割することができ、光の損失の少ない偏光フィルターへの応用が考えられる。
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