研究概要 |
われわれが開発した超音波探針顕微鏡は,通常のSTM探針の根本に圧電体を貼りつけ,超音波パルスを加えて超音波パルスエコーを観測し,超音波パルス重畳法を用いて精密音速測定をすることにより表面と探針との相互作用を検出する。探針先端が十分鋭い場合には10nmオーダーの分解能が得られることを実験的には確かめている。しかし,その動作原理の詳細が解明されていない。この最大の理由は,探針先端の形状の制御が困難なことと,表面に接触を開始するとき,先端が塑性変形を受けてしまうことである。力学的に強靭なカーボンナノチューブを使用することにより,探針先端の形状を定めた実験を実施し,その動作原理の解明を目指した。 タングステン探針先端へのカーボンナノチューブの形成: カーボンナンチューブを製作し、タングステン探針の先端に取り付ける従来の方法には定常的に作成することは成功しなかった。ガラス基板上にスパッタリングした薄いNi膜を数マイクロメートル角に形成し、CVDにより選択的に形成する方法によりナノチューブを生成することには成功した。タングステン探針先端に探針への適用は今後の課題である。 精密音速測定回路の改修: 従来はいわゆる超音波パルス重畳法を用いて10^<-6>の精度で音速変化を測定する回路を自作して使用してきた。探針と表面との相互作用を検出する超音波シグナルは,送信パルスの繰り返し周波数を位相変調し,超音波振動に対応するバーストパルスを発生させ,検波したエコーの振幅変化をロックインアンプにより検出し,その位相変化出力を用いる。今回,精度を上げるためにシンセサイザーからの連続波をゲートして送信パルスを作製することを試みたが完成していない。 本研究でも使用している,剪断変形と伸縮変形を利用したアクチュエータに付いては実用性能を検証することができた。
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