研究概要 |
キャリア寿命の短い光伝導アンテナへのフェムト秒レーザーパルスの照射によって,従来よりも効率的で高出力のテラヘルツ光源が開発され,各種の非破壊計測や短距離通信などの分野への応用が期待されている。本研究では,フォトニック結晶中のQ値の大きな局在電磁モードを利用することにより,光伝導アンテナから発生するテラヘルツ光の狭帯域化を目指す。本年度は,ダイヤモンド型フォトニック結晶の局在モードについて,平面波展開法によるフォトニックバンド計算とFDTD(時間領域差分)法によるモード解析を行い,作製可能な試料パラメータの範囲で最大のバンドギャップとQ値を実現する試料構造を設計した。これにもとづいて,大阪大学接合科学研究所宮本研究室に光造形法による試料作製を依頼し,金属酸化物のナノ粒子を分散したエポキシ樹脂(誘電率8.8)から成り,試料中心部に空洞を有する3次元ダイヤモンド型フォトニック結晶を得た。低温エピタキシャル成長させたGaAs膜に間隔5ミクロンの電極を取り付けた光伝導アンテナを試料の空洞部分に埋め込み,試料外部からパルス幅150フェムト秒の近赤外レーザーパルスを照射してテラヘルツ光を発生させた。テラヘルツ光の発生は試料外部に置いたもう1つの光伝導アンテナを用いて確認した。光伝導アンテナの基板による多重反射のために出力に大きな干渉パターンが現れてデータの解釈を難しくしているので,現在解決を図っているところである。
|