研究概要 |
火力発電,原子力発電等の高温プラントおよび航空機エンジン用ガスタービンなどの過酷な環境下で使用される材料は,高効率稼動にともなう使用環境の激化から,クリープ損傷や酸化脆化などの度合いも激しくなり,その老朽化が人命を左右する大事故に発展する可能性をはらんだ重要かつ早期解決が望まれる問題である.本研究では,巨視的な破壊を向かえる前の微視的な破壊初期段階で,積極的に損傷を除去し,材料の再生・治癒(rejuvenation)を行うことを目指し,最近,金属学的現象にさまざまな影響を与えることが明らかとなってきた「磁場作用」を利用した熱処理により,高温変形損傷を受けた多結晶材料の機能・性能を回復させる方法を確立することを目的としている. 本年度は,ガスタービンの動翼などに用いられているニッケル基合金IN100のγ'相ラフト化損傷に着目し,磁場中熱処理によるラフト化損傷の治癒・再生を試みた.高温疲労環境下(1073K,327MPa,0.05Hz)における使用においてγ'相のラフト化が起こった試料を,1073Kおいて20時間,6Tの磁場中および無磁場中において再生熱処理を行った.その後,SEM組織観察により,γ'相の面積分率,γ'相粒子の面積分布およびアスペクト比の定量評価を行い,磁場中再生熱処理の効果を検討した.無磁場中熱処理においては,γ'相粒子は互いに連結し,粗大化が促進されるのに対し,ラフト化したγ'相に垂直方向に6Tの磁場を印加して再生熱処理を行った試料では,γ'相の粒子数が増加し,個々の粒子のサイズは再生熱処理前に比べ小さくなった.このことより,磁場中熱処理により,ニッケル基合金のラフト化損傷の治癒・再生が可能であることが明らかとなった.
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