研究概要 |
2年目は,生物の分岐網形態の最適性について統一的な説明,解釈を試み,分岐網形態力学を構築することを目的として実施し,以下の成果を得た. 1)植物分岐網の成長シミュレーション 前年度に確立した分岐網の力学モデル,分岐網形態創成シミュレーション手法,最適性の評価法を,樹木の分岐網の成長シミュレーション,根子の分岐網成長シミュレーションに適用して,得られる分岐網形態と分岐則や成長則などの各種パラメータ,栄養分などの環境因子との関係,形態形成に重要なパラメータと目的関数の達成度の関係,目的関数の違いによる成長形態の相違などを検討した. 2)血管分岐網形態のシミュレーション 開発した分岐網形態成長シミュレーション・評価法を利用して,ガス交換のための肺の動脈,静脈網分布の分岐形態創成シミュレーションを実施し,生体との対比により,その類似性,支配分岐則,成長則の支配パラメータについて検討した. 3)構造形態設計への適用 構築した分岐網形態シミュレーション・評価法を用いて,最大剛性や座屈荷重最大,振動数最大などを目的関数に特に分布荷重を集中した柱で支持する構造など複雑な構造形態の最適設計を試みた.応力分布やひずみエネルギー分布と環境刺激パラメータのアナロジーにより,従来より強度や剛性などの構造特性が高い構造形態の創成を達成した. 4)熱交換システム設計への応用 分岐網形態の成長シミュレーション・評価法を熱流体移動問題に拡張,適用して,樹脂成形金型の冷却管路網設計など冷却水供給用の分岐構造網と高温水回収用分岐構造網を網末端で結合した冷却管路網を対象に格段に熱交換効率の高い管路網設計を試みた.型成形によって鋳造される製品の熱変形を最小にする冷却管路網の設計結果を,流体・熱伝導・応力解析,型成形流動解析を通してある程度検証した.
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