研究概要 |
マイクロ非球面ガラスレンズをプレス加工するための技術を研究した。現在,プラスチックの微細光学部品は,射出成形やプレス加工によって大量生産され,CD, DVD,光通信デバイスなどに利用されているが,プラスチックは熱膨張が大きいこと,湿気に弱いこと,分散が大きいこと,短波長光の吸収が大きいことなどの問題を有している。したがって,微細光学部品材料をプラスチックからガラスに置き換えたいというニーズが存在する。昨年度は,マスクレス露光機を用いて,シリコン基板に非球面レンズ形状を形成する技術,およびシリコン基板の非球面レンズ形状を,SiCモールドに高精度に転写する技術を研究し,研究計画通りの成果をあげた。今年度は,SiCモールドを用いて,ガラスにプレス加工する技術を研究した。 ガラスプレスのために,所有していた真空ホットプレスを改造し,モールドとガラス板とを取り付けるステージ,プレス圧・プレス量を精密制御するためのサーボモータ駆動油圧回路,特殊油圧シリンダなどを装備し,これを制御するためのソフトウェアを開発した。これを用いて,ガラスプレス実験が可能になった。試料には,MEMSに多用されるパイレックスガラス(コーニング7740)を選択した。このガラスの軟化点は約820℃であるので,この温度近傍でプレス加工を行い,SiCモールド上の微細パターンを良好に転写できた。また,このときSiCモールドの損傷は見当たらなかった。以上の結果から,SiCモールドを用いたマイクロ非球面ガラスレンズのプレス加工技術のフィージビリティを確認し,本研究の目的を計画通り達した。
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