研究概要 |
本研究は,軟質材の形状コンフォーミティーと摩擦面の撥油性による流体の固体壁面滑りの促進効果を利用して,流体潤滑における摩擦係数を飛躍的に低下させる可能性と,その適用範囲を明らかにすることを目的としている.本年度は,ガラス円筒試験片の曲面にラングミュア・ブロジェット法(LB法)による脂肪酸吸着膜を付与し,これを用いた低面圧EHL実験行うとともに,アクリルゴム試験片を用いた潤滑膜流れの観察,及び吸着膜を有する面上での分子の挙動を分子動力学法によるシミュレーションを行った.ポリαオレフィンを潤滑剤として,ガラス円筒試験片とガラス円板試験片間の線接触純滑りEHL実験を行い,面圧20MPa程度,せん断速度が6〜8×10^4s^<-1>のもとで,静止側試験片(円筒試験片)にステアリン酸LB膜を付与した場合に,LB膜を付与していない場合よりも流体潤滑から混合潤滑領域において摩擦係数が若干低下することを確認した.ゴム試験片を用いた実験においては,潤滑油中にミクロンオーダーのガラス粉体,ないしは蛍光粉体を混入させ,蛍光顕微鏡によって観察を試みたが,壁面滑りの有無の検出は成功していない.分子動力学シミュレーションにおいては,潤滑油としてヘキサンないしシクロヘキサンが,アルキル鎖を規則的に配置した表面と体心立方格子の鉄表面との間にはさまれせん断を受けたとき,潤滑油とアルキル鎖との間で速度が不連続となり,一様速度分布に近づくこと,またそれに伴って摩擦係数が低下すること,壁面滑りの程度はアルキル鎖の長さ及び潤滑剤分子の構造の影響を受けることなどを確認した.
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