研究概要 |
本研究は,固体表面上に部分的または全面的に形成した自己組織化単分子膜によって,固体表面に流動潤滑剤の貯蔵を目的とした構造を形成させることを目的としている。これによって,超高密度記録装置、精密位置決め機構、精密搬送装置、精密回転機械、マイクロマシン、宇宙用軸受などの微小機械のしゅう動要素として有用な潤滑剤貯蔵構造を開発する。 上記の機械要素などにおいては潤滑剤給油が困難なため長期間のメンテナンスフリーが要求されている。しかし、潤滑剤には流動性あるいは蒸発性があるため、潤滑剤が必要な部位からの離脱枯渇が不可避である。特に、回転部分からのスピンアウト(遠心力による飛散)が重大な潤滑油離脱の原因として挙げられている。そこで,潤滑油の離脱、枯渇を防ぐための、潤滑面上あるいはその近傍に設けるべく潤滑剤貯蔵構造及びその製造方法を提供することをその課題とする。 自己組織化単分子膜は固体表面と化学結合して吸着性を示す。自己組織化単分子膜を部分的あるいは全面的にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)表面に形成する。本研究では,1H,1H,2H,2H-Perfluorodecyltrichlorosilaneを用いた。この分子の化学式はCF_3<CF_2)_7CH_2CH_2SiCl_3で表される。続いて,フッ素系の潤滑剤分子PFPE(パーフルオロポリエーテル)を塗布する。PFPE分子の流動性をエリプソメータによって測定したところ,自己組織化単分子膜を形成した場合にはPFPE分子の流動が妨げられることが明らかになった。自己組織化膜はそれ自身の低濡れ性によって、あるいはそれ自身が物理的障害となって、PFPE分子の流動を阻止して、潤滑剤貯蔵構造を形成すると考えられる。
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