研究概要 |
本研究の目的は、将来の不揮発性多値・アナログメモリ実現に向けて、強誘電体薄膜材料の多値およびアナログ情報の記憶能力・保持機能を明らかにし、多値メモリ、アナログメモリに適したデバイスと回路構成を提案することである。本研究では、強誘電体ゲートトランジスタが、ゲート絶縁膜となる強誘電体膜の部分分極反転状態を利用するとドレイン電流値がアナログ的に変化し、かつその値を記憶できることを示した。本研究では、2種類のデバイスを試作して測定を行った。最初に、強誘電体に(Sm, Sr)Bi_2Ta_2O_9 (SSBT)、半導体にシリコンを用いた金属/強誘電体/金属/絶縁体/半導体(MFMIS)構造の強誘電体ゲートトランジスタを作製し、電気的特性を評価した。強誘電体ゲートによる正常なメモリ特性を得ることができたが、メモリの保持時間は強誘電体を完全に分極させた場合でも不十分であった。さらに部分分極反転状態を利用するとより保持特性は劣化する傾向があることが分かった。次に、チャネルにシリコンではなく導電性酸化物のインジウム・スズ酸化物(ITO)を、強誘電体には大きな残留分極が得られる(Bi, La)_4Ti_3O_<12> (BLT)を用いた強誘電体ゲート薄膜トランジスタを作製したところ、不揮発性メモリ機能を持つ良好なトランジスタ特性が得られた。特にメモリ特性を評価したところ、保持時間は1日以上であった。このデバイスに強誘電体が完全には分極しない低電圧で書き込みを行い、部分分極反転状態で保持特性を測定したところ、ドレイン電流は10^3秒まで全く変化せず、不揮発性多値・アナログメモリとして有望であることが明らかとなった。
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