研究概要 |
Coアセチルアセトナートを用いたポリオール還元法において,界面活性剤(オレイン酸)と高分子保護剤(trioctylphosphine oxide, TOPO)の両方を添加することによって,2-5nmの径でアスペクト比が10以上のファイバー状のナノ粒子が得られることをもとに検討を進めた.ファイバー状粒子の生成に対する要因のうち,オレイン酸とTOPOの共存,かつオレイン酸とTOPOの投入手順が大きく影響を及ぼすことがわかった.TOPOとCo錯体の比率を変えることによって球状Co粒子との生成割合が変化したが,ファイバー状粒子単独の磁性を評価するのに十分な精製が行なえるレベルには至らなかった.球状粒子では酸化が確認されなかったのに対し,ファイバー状粒子では酸化していることが確認されたが,酸化が粒子の生成中に起こったのか,生成後(精製中あるいは保存中)に起こったのかを断定することはできなかった. 一方,高い磁気異方性を有する物質を用いてファイバー状のナノ粒子を形成することは磁気記録用に有効であると考えられる.そこで,L1_0規則合金であるFe-Pdナノ粒子の合成においてTOPOを保護剤として用いたが,生成するのは球状粒子のみであった.ファイバー状粒子の生成には析出した金属原子が鎖状のTOPOに配位することが必要であるが,元素による配位能の違いがファイバー状粒子が生成するかどうかに大きな影響を与えるものと推測できる結果であった. 以上の結果から,本研究では試行することができなかったが,Coをベースとして耐酸化性にすぐれるPtなど貴金属との合金がファイバー状磁性微粒子の生成には適しているのではないかと推測される.
|