研究概要 |
電界効果型Siトランジスタのゲート直上に形成した酸化物強磁性体薄膜の残留磁化を利用して,Siトランジスタのキャリア移動度を向上する可能性を見出し,この原理を利用して,磁性体薄膜の効果により,電界効果トランジスタの特性を向上することを検証し,全く新規な高速動作型トランジスタの原理的な可能性を探った.本年度は,前年度に続いて,強磁性体をMOS FET上に再現性よく作成するプロセスの確立と,強磁性体薄膜の残留磁化がトランジスタ特性に与える影響の検討をおこない,前年度の結果を受けて,デバイス化の可能性の基礎的な検討を行った. Si-MOSFET基板のゲート部に,RFマグネトロンスパッタ法により、バリウムフェライトを室温で成膜した.リフトオフ法により、磁性薄膜をゲート上だけに残すべく微細加工し,800℃,10minのポストアニールにより磁気特性を引き出した.チャネル中を流れる電子が,ゲート界面に垂直な方向のSi側に力を受けるような向きに着磁し、その前後でトランジスタI_D-V_D測定を行った。ドレイン電流の増加から移動度の上昇を算出した。作製した薄膜の磁気特性はVSMを用いて評価し、pAメーターでMOSFETのI_D-V_D測定を行った。 その結果,電磁石のon/offによる外部磁場中でのトランジスタI_D-V_D測定をもとに、一定ドレイン電圧4Vでのドレイン電流の変化量のゲート長依存性を検討した.その結果,磁束密度が大きくゲート長が短いほど、ドレイン電流の変化量が大きいことがわかった.得られたバリウムフェライト薄膜は,残留磁化が250mT、保磁力は4.4kOeであった.着磁前後のMOSFETのI_D-V_D測定の結果から,着磁後,ドレイン電流が増加した.この変化を移動度の上昇として算出すると、着磁前の450cm^2/Vsに対して,着磁後は540cm^2/Vsとなり,約20%上昇している.また,外部磁場10kOe中で10分間着磁した後リテンション測定を行ったところ,バリウムフェライトの残留磁化は10日持続することがわかった.
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