研究概要 |
ディーゼルエンジンから排出されるディーゼルパティキュレート(PM)と窒素酸化物(NOx)による環境汚染が深刻化しており,これらの排出抑制技術の開発が求められている.そこで本研究課題ではPMを高効率で除去する触媒システム構築を目的としている.本年度は燃料中に含まれる硫黄分による触媒の被毒に着目し,耐SOx被毒性についての検討を行うとともに,ススの燃焼活性の評価とSOx被毒機構解明を試みた.対象とする触媒は,活性、安定性などの観点からスス燃焼活性の高いMn系酸化物にカリウムを置換した複合金属酸化物触媒La_<0.8>K_<0.2>MnO_3、K_2Mn_4O_8など取り上げた.結果を以下に述べる. 1.K_2Mn_4O_8,LaMnO_3,La_<0.8>K_<0.2>MnO_3,La_<0.6>K_<0.4>MnO_3,La_<0.8>Sr_<0.2>MnO_3のSO_2被毒前後における熱重量分析(TG)測定結果から燃焼温度の比較を行なった結果,K_2Mn_4O_8ではSO_2被毒前後及び被毒温度の違いによるススの燃焼特性変化はほとんど無く,高活性かつ耐SO_2被毒性が高いことが明らかになった.一方,その他のペロブスカイト系触媒では,初期活性は異なるものの,SO_2処理温度の上昇とともにスス燃焼活性は低下していき,500℃処理後では全ての触媒でほぼ同レベルの活性となる. 2.これらの触媒に関してSOx被毒中に水蒸気の与える影響について検討を行った結果,SO_2被毒処理中の水蒸気流通の有無によってスス燃焼温度にほとんど変化がなく,SO_2被毒処理中の水蒸気共存の影響はほとんど無いと考えられる. 3.X線光電子分光分析(XPS)の結果,La_<0.8>K_<0.2>MnO_3では表面に硫酸マンガンが偏析することで表面に存在するK濃度が低下したことが,SOx被毒によるスス燃焼活性低下の直接的原因であることが示唆された.
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