研究概要 |
連続発振のレーザーをエネルギー源とするレーザー推進は,プラズマ推進機と異なり電源を搭載する必要がないため,電力-重量比を極めて小さくできることに加え,大きな推力密度が期待される推進システムである.このような特徴から,軌道間輸送ミッションや,地球や惑星の大気を利用した推進ミッションなどへの応用が期待される.このレーザー推進の実現のためには,レーザーからのエネルギーを効率よく作動流体に与え,いかに高いエンタルピーの流れを達成できるかが鍵となっている. 本年度は,平成十六年度に確立されたレーザープラズマと誘導結合型プラズマの安定化手法を用いて,旋回流の導入がエネルギー変換効率に与える影響について調べた.ソニックフロー法およびレーザー吸収分光法を用いた測定の結果,以下のことがわかった. ・旋回流の流量割合が少ないほど,誘導結合型プラズマがより下流に生成され,気流のエンタルピーが高まる. ・旋回流の導入割合を少なくすることで,気流中心のエンタルピーが30%程度増加する.この結果,最大2MJ/kgのエンタルピー流を得た. ・高エネルギーレーザーを誘導結合型プラズマに応用することで,プラズマ生成条件が拡大しエネルギー変換効率が高められる. また,本研究で得た誘導結合型プラズマ生成技術をイオンビーム源の中和器として応用する実験を行った.イオンビーム中和器は,プラズマ推進機への応用のほか,各種プラズマプロセッシング技術に不可欠なものとして,その開発が産業界から期待と需要が高まっている.無電極放電である誘導結合型プラズマを用いる事により,クリーンかつ高い寿命を誇る中和器の開発が可能となる.実験の結果,従来に比べ電子生成コスト,推進剤利用効率が高い中和器の開発を実証した.
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