研究概要 |
本研究は、電磁力で加速されるプラズマ流れに対し,最適な加速チャネル形状の存在の有無を検証すること,最適解が存在するならその形状を解析的に明示し,実験的にも確認することを目的とした。 研究代表者らは、既に準1次元の電磁加速項のみを考慮したプラズマ流れ場にあって極大の加速効率を示す最適形状が存在するであろうことを変分法を用いた数値解析によって世界で初めて予測していた。それはド・ラバール氏のノズル形状に似ているが、変分法による解析では出口形状が38を超える大きな開口比となって準1次元を逸脱していると考えられた。そこで、今回は変分法ではなく、遺伝的アルゴリズムの手法を適用して、同様の最適形状を求めた。その結果、出口形状の開口比に制約を設けることで生ずる出口径の違いを除けば、遺伝的アルゴリズムで求めた最適形状も変分法で求めた最適形状に酷似しており、やはり大きな出口径を有することが判明した。 遺伝的アルゴリズムと言う、定式化の手順が固まった手法の成功によって、流れ場の条件を比較的容易に増やせるようになったため、これまで考慮することのできなかった、圧力項を入れた解析が可能になった。その結果、電磁加速項にさらに圧力項を加えた解析においても、やはり最適形状は存在し、それは圧力項を考慮しない時よりもさらに出口径の大きな形状であることが判明した。今回は残念ながら、電離の効果がどう効いて来るのかと言う点は解析できなかった。 その代わりに、最適形状に似た形状をした実際のMPDスラスタで推進性能評価を行ったところ、最適形状と予測された形状に近い方が性能が10%程度良いことが判明した。今後は準一次元の電離の効果を入れた解析、および多次元の最適化に取り組む必要があるが、今回の研究の範囲では手が届かなかった。
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