研究概要 |
高粘度燃料の微粒化促進と,空間的分散の制御を可能にするような燃料噴射技術の基礎を確立することを目的として研究を進めた.まず前年度に引き続いて軽油を対象とした噴射率変動付加実験を行い,それと共に,高粘度油の燃料噴射実験,噴霧燃焼実験,さらに噴射率変動付加実験を実施した. (1)噴射率変動付加実験 軽油を燃料として7kHzまでの噴射率変動を付加して,非蒸発噴霧の可視化実験を行った.ノズルを変更した実験においても,特定周波数より高周波数側で噴霧の空間的な広がりが改善されること,その周波数は噴射率変動の振幅と平均噴射率の比(相対噴射率変動振幅)に影響を受けること,また相対噴射率変動振幅が等しければノズルが異なっても同じ周波数から噴霧の空間的分散が改善されることなどを明らかにした.これらにより,この現象は相対噴射率変動振幅が支配する現象であることを明らかにした. (2)高粘度油の噴霧・燃焼実験 重油を模擬する高粘度油としてパーム油を採用し,軽油と混合させたものについて燃料噴射および燃焼実験を行った.混合率を100%までと,昨年度に比べて大きく変化させて検討した結果,混合率の増加に伴い噴射率形状の立ち上がりが緩くなること,またこれは燃料の粘度の影響であることが明らかになった.このために噴霧の進行が遅れ,また噴霧の広がりも悪化することを確認した.一方燃焼特性については,パーム油混合により着火が早くなると共に燃焼期間も短縮することが明らかになった.パーム油独自の燃焼特性が現れたものと判断され,重油の噴霧特性を模擬する上では問題ないものの,燃焼特性を模擬する燃料としては不適当であることが分かった.なお噴射率変動を付加した実験を行った結果,軽油単体の場合と定性的には同様に,噴霧の空間的分散が改善されることが確認され,本手法による重質油の微粒化促進,空間的分散の制御が可能であることが確認された.
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