研究概要 |
分泌タンパク質の細胞外での選別回収に関わる未解明機構の探索 植物細胞は常時,細胞外,すなわち細胞壁中に多量のタンパク質と糖質を分泌し,細胞壁構造を構築・再編しながら形態形成,生体防御,細胞間の情報や物質の輸送など,多岐に亘る機能を処理している。分泌される高分子類は,恒久的に細胞壁中に残留するもの(構造タンパク質やセルロースなど)と,役割終了後,細胞壁中より直ちに姿を消すもの(酵素タンパク質)とに大別される。後者は細胞壁中の何らかの選別・回収システムを介して,細胞内に戻され,資源として再利用されているはずである。しかし,その選別・回収システムの存在は未だ解明されていず,その分子機構は全く不明である。 本研究の目的は,原形質膜外、すなわち、アポプラストへ分泌された後のタンパク質の選別・回収の分子機構の存在を実証し,その分子機構の解明に繋がる糸口をつかむことである。この目的のためにまず、細胞壁中に分泌されるタンパク質群のプロテオーム解析を行った。すなわち、シロイヌナズナの培養細胞Alex株を用いて、細胞を破砕せずに、無傷の培養細胞およびプロトプラストより1時間および3時間細胞壁を再生を経たのちの細胞より、それぞれIMKCl溶液により細胞壁にイオン結合により吸着しているタンパク質を溶出させた。この方法を用いることにより、原形質や液胞タンパク質の混入のない細胞壁タンパク質画分を得ることが可能となった。上記の三つの細胞壁画分由来のタンパク質を二次元電気泳動により分離・マッピングを行ったのち、それぞれのタンパク質スポットを回収し、トリプシン消化後、MALDI-TOF/MSにより一次構造推定および遺伝子の推定を行った。更に、各タンパク質スポットのリン酸化および糖鎖付加の状態を解析した。その結果、細胞壁再生過程で著しい変動を示すタンパク質群を同定することができた。
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