研究課題
萌芽研究
副腎皮質細胞においてACTHシグナルの下流にあるcAMP-PKA経路は多くのステロイド合成酵素遺伝子の発現を調節する。塩誘導性キナーゼ(SIK)はPKAの活性化によって誘導され、PKAで活性化されるCREB依存的な遺伝子の発現を終結させる。SIKがリン酸化する基質を検索した結果、TORC(Transducers of Regulatory Coactivators)という新規のCREB特異的転写共役因子を発見した。一方、SIKは癌抑制キナーゼの1つであるLKB1でリン酸化され活性化される。今回われわれは、LKB1を欠損した細胞内におけるステロイドホルモン合成酵素遺伝子の発現を検討した。またスタウロスポリンによってSIKを阻害した場合の遺伝子発現の動向も検討した。その結果、TORCはSIKによりリン酸化されると核から細胞質へと移行する。この現象がSIKによるCREB抑制機構の中心であろう。興味深いことにSIKの上流にあるLKB1を欠くHeLa細胞ではTORCは常に核内に止まる。SIKのシグナル欠損をRNAiを利用して再現することを試みたが結果は必ずしも有意ではなかった。その理由はSIKには3種のアイソフォームが存在し、その1つを抑止しても他がそれを補完するからであろう。そこでSIK活性を阻害する低分子薬剤をスクリーニングした。CREレポーターを導入した293細胞(LKB1発現細胞)に種々の薬剤を投与し、CREレポーターの活性を測定した。その結果、スタウロスポリンがCREBの活性を促進させることが分かった。スタウロスポリンは種々のキナーゼを阻害することが知られている。そこでSIKに対するIC50を測定した。SIK1に対するIC50はin vitroで0.2nM、in vivo(培養細胞)で5nMあった。つまりSIKはスタウロスポリンに対して非常に感受性が高く、これまで報告されているスタウロスポリン感受性キナーゼであるPKCに匹敵する。したがってスタウロスポリンの濃度を低く抑えることにより、SIKの阻害効果に焦点を合わせて解析することが出来ると考えられた。
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