研究概要 |
酵母や培養細胞系などにより現在までに蓄積されているリソソーム/液胞系の知見を多細胞系で検証し、個体におけるリソソーム/液胞系のより高次な生理的意義を明らかにすることを目的として以下のような解析を行った。 (1)線虫vps遺伝子のノックアウト変異体の分離 液胞蛋白質輸送に関わる酵母変異体はvps遺伝子としてだけではなくさまざまな遺伝学的スクリーニングで同定されており、pep、vamなどについてもスクリーニングの対象にした。また、酵母では変異体として同定されていないが輸送系で重要な蛋白質ドメインをもつものに関してもスクリーニングの対象にした。変異体の分離は欠失変異をランダムに導入し目的とする欠失変異をPCRでスクリーニングするTMP/UV法を用いた(Gengyo-Ando & Mitani,2000)。分離した変異体は以下の通りである。(A)Sec1/Munc18;VPS33ホモログ2アリル,VPS45ホモログ1アリル(B)Syntaxin ; PEP12ホモログ3アリル,TLG2ホモログ1アリル,VAM3ホモログ1アリル(C)RabGTPase;RABホモログ15アリル(D)dynamin;VPS1ホモログ2アリル(E)VPS9ホモログ3アリル(F)PEP3/VPS18ホモログ1アリル(G)VPS39/VAM6/VPS3ホモログ1アリル(H)retromoer;VPS26ホモログ1アリル(I)VPS54ホモログ2アリル (2)変異部位の同定と変異体の維持 各変異体から欠失領域を含むPCRフラグメントを精製し、direct sequencing法で欠失領域を同定した。遺伝子のコード領域を数百〜2kb程度欠いた変異体が得られた。野生型株との戻し交配および致死変異体のバランサー導入を行った。 (3)変異体の表現型と機能解析 得られた変異体の半数以上がホモ接合体として維持不可能であり、vps遺伝子群の多くは動物個体の生存や発生に必須の遺伝子であると考えられた。さらに(A)および(B)の遺伝子変異体についてトフンスジェニックマーカーを用いた解析を行ったところ、ゴルジ体からリソソームへの輸送だけでは細胞膜からリソソームへのエンドサイトーシス経路にも輸送異常を示す変異体があることがわかった。 本研究課題を遂行することにより、さまざまなvps遺伝子群の遺伝的に安定した株が得られ、トランスジェニック解析を駆使した各々の蛋白質の機能解析を行なうための基盤作りができたと考えられる。
|