研究概要 |
供試材料 独立行政法人林木育種センター東北育種場奥羽増殖保存園(山形県東根市)の交配園に植栽されている西部育種区のスギ精英樹17クローンから,供試種子を採取した。 量子収率パラメータの解析 ミニプランターに鹿沼土を入れ,液体肥料を施して,発芽床をつくった。播種後,発芽した個体の子葉について,光合成量子収率に関するパラメータをPFD(光合成有効光量子束密度)との関係で調べた。測定にはクロロフィル蛍光測定器(PAM-2000,Walz, Germany)を用い,Fv/Fm(暗黒順応最大量子収率),Y(光照射下量子収率),rETR(相対電子伝達速度),NPQ(非光化学クウェンチング係数),ECE(励起捕捉率),qP(光化学クウェンチングパラメータ),qN(非光化学クウェンチングパラメータ)を求めた。 精英樹クローンの特性評価 Fv/Fmは,どのクローンでも0.79前後にあり,クローン間に有意な差は認められなかった。rETRは,PFD300〜500μmol q. m^<-2>s^<-1>で光飽和に達した。rETRの光飽和値(rETR_<max>)は,クローンにより有意に異なっていた。rETRは能代3号,田川2号,六日町4号で大きく,早口2号,早口5号,雄勝17号で小さかった。NPQとPFDとの関係をゴンペルツ成長関数で近似し,光飽和度を解析した。NPQの光飽和度も,クローン間で有意に異なっていた。光飽和しやすいクローンとして早口2号,早口5号が,光飽和しにくいクローンとして能代3号,田川2号,六日町4号があった。rETR_<max>が低くNPQが光飽和しやすいものは陰生系統,rETR_<max>が高くNPQが光飽和しにくいものは陽生系統とみなせる。しかし,雄勝17号はrETR_<max>は低いが,NPQは光飽和しにくかった。以上のように,光強度に対する子葉の光合成反応は精英樹クローンにより有意に異なっていた。精英樹の光合成生理特性を早期に評価するのに,本法は有効と考えた。
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