研究課題
萌芽研究
魚類の体液浸透圧は、浸透圧調節器官の統合的な作用によって海水の約1/3の値に保たれている。しかし環境水が重金属等で著しく汚染されると、急性の応答としてまず鰓が損傷を受けて水・イオン調節機能が失調し、重篤な場合には死に至る。昨年度の研究では、発眼期シロサケの卵黄と胚体の間を糸で縛り卵黄部分だけを切り出した「卵黄巾着」培養系を用い、卵黄嚢上皮の水透過性に及ぼす環境水中の2価イオンの影響を調べた。その結果、Ca欠如淡水では浸透圧差によって内部に水が流入し重量が有意に増加したが、0.1mM以上のCaの存在下では水透過性は低く抑えらることが明らかとなった。そこで本年度は、0.5mMのCaを含む淡水に様々な濃度の水銀(Hg)を添加した溶液で卵黄玉を1時間培養し、Hgが膜の水透過性に及ぼす影響を調べた。Hgを添加しない場合、卵黄玉の吸水は極めて低く、0.2%程度に留まったが、Hgを0.001〜1.0mMの濃度で培養液に加えると、濃度依存的に卵黄玉は吸水し、その重量を増した。Hg濃度が0.01mMでコントロールと比べ有意に重量が増加した。また環境水のpHが卵黄玉の水透過性に及ぼす影響を調べたところ、Ca存在下で中性付近では卵黄玉の水透過性は低かったが、pHの低下に伴い水透過性が上昇した。上記2種類の人為的な汚染環境水に卵黄巾着が応答し水分含量が変化したことから、本アツセイ系が当初の目的どおり環境水の汚染モニターとして機能し得ることが示された。また本バイオアッセイを用いることで、生体膜の水透過性に急性の影響を与える環境変化を広くモニターすることが可能であると考えられる。
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