研究概要 |
近年,食に対する消費者の健康・安全指向の強い高まりから,農産物の品質評価・検査は,これまで以上に厳密さが要求されるようになった.本研究は,農産物の品質特性抽出にスペクトル情報と画像情報とを融合したハイパースペクトルイメージング法を用いて,サツマイモ(紫イモ)およびイチゴのアントシアニン色素分布の評価を検討した.ハイパースペクトルイメージングでの画像取得は,液晶可変フィルターと高感度冷却CCDカメラを用いて,450〜1000nmの範囲を1nm間隔で連続的に行った.取得した分光画像と化学分析値との間で重回帰分析を行い検量線を作成し,この検量線を画素ごとに適用して成分分布の可視化画像を作成した.その結果,以下のような知見を得た. 1)サツマイモ(紫イモ)のアントシアニン色素分布の可視化 アヤムラサキでは,分光画像の523nmと抽出液の525nmにおける吸光度には強い関係が認められた.523nmを第一波長として5波長で検量線を作成した結果,重相関係数R=0.921,標準誤差SEP=0.052であった.また,この検量線を各画素に適用し,アントシアニン色素分布の可視化画像と分布割合のグラフを作成し,個体間の評価を試み,ハイパースペクトルイメージングの有用性を確認した. 2)イチゴのアントシアニン色素分布の可視化 分光画像の508nmと抽出液の504nmにおける吸光度には強い関係が認められた.508nmを第一波長として5波長で検量線を作成した結果,重相関係数R=0.932,標準誤差SEP=0.213であり,予測精度は良好であった.この検量線を各画素に適用して作成したアントシアニン色素分布の可視化画像と分布割合のグラフから,個体間の評価が可能であった.また,予測精度への撮影距離の差は20mm程度では影響なかったことから,イチゴのような小形果実へのハイパースペクトルイメージングの有用性が示唆された.
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