研究概要 |
シダ植物の生産する物質を医薬資源として利用することを目的に研究を行った。特に、シダ植物に特徴的なトリテルペンを対象とし、生合成遺伝子を利用した物質生産系の構築を目指した。当該期間においては、トリテルペン合成酵素のクローニングを行った。微生物型のトリテルペン合成酵素間でよく保存されている領域を基に縮重入りプライマーをデザインし、cDNAを鋳型としたPCRによりDNA断片の増幅を行った。得られたcDNA断片の塩基配列を解析した。ホウライシダから1種(ACH)、アオネカズラ(Polypodiodes niponica(Mett.)Ching)から3種(PNT,PnSC2,3)、オシダ(Dryopteris crassirhizoma Nakai)から2種(DCD,DcSC2)のクローンが得られた。それらの配列に特異的なプライマーをデザインし、3'-および5'-RACE法によりACH,PNT,DCDの全長塩基配列を決定した。これらは微生物由来のトリテルペン合成酵素とアミノ酸配列において34-40%の相同性をもつ一方、シダ植物由来サイクロアルテノール合成酵素ACXとは19%の相同性しか示さなかった。各クローンを酵母発現ベクターpYES2に組み込み、酵母を形質転換した。ヘキサン抽出物をGC-MSにより分析した。生成物は微量であったが、標品との比較により生成物を、それぞれhydroxyhopane、tirucalla-7,21-diene、dammara-18(28),21- dieneと同定した。以上の結果から、ACHはハイドロキシホパン合成酵素、PNTはチルカラジェン合成酵素、DCDはダンマラジェン合成酵素と同定した。
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