研究概要 |
1.ケミカルシャペロンとして知られている4-フェニル酪酸(4-PBA)の小胞体ストレス抑制作用について明らかにするため,小胞体ストレスに対する4-PBAの作用を検討した。その結果,4-PBAは小胞体ストレスを抑制し,それによる細胞死を抑制、した。さらに4-フェニル酪酸の作用機序を明らかにするため,in vitroにおけるシャペロン活性を検討したところ,4-PBAはin vitroにおいてタンパク質の凝集を抑制することを明らかにした。家族性パーキンソン病(AR-JP)の原因遺伝子Parkin(ユビキチンリガーゼ:E3)の基質タンパク質Pael-Rは,AR-JPにおいて小胞体に蓄積し,小胞体ストレスを引き起こす。Pael受容体に対する4-PBAの作用を検討したところ,4-PBAはPael受容体の正常な発現を促進し,Pael受容体蓄積による小胞体ストレスとそれによる細胞死を抑制した。 2.小胞体のタンパク質の分解系である小胞体関連分解(ER associated degradation:ERAD)に関与し,小胞体ストレス抑制作用を有する遺伝子の同定と機能解析を行った。RING-fingerドメインを有すること,膜蛋白質であること,小胞体に局在することを条件として,バイオインフォマティクス的解析によりERAD関連新規E3の候補を検索したところ,51の遺伝子を選出した。そのうちの8遺伝子が小胞体ストレスによって誘導された。つぎに,絞り込まれたERADに関与すると考えられる遺伝子7個をクローニングした。そのうち3遺伝子が,小胞体に局在してE3活性を有し,小胞体ストレスによる細胞死に対して保護作用を示したことから,ERADに関与する新規のE3であることが示唆された。
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